会議のノウハウ本を読みました。軽くてすぐ読める本です。装丁がシンプルで内容をよく表していていいですね。
私もITの力を利用して少しでも生産性を上げたいと考えているのですが、ITは覚えなければいけないことが多い割に、役に立つ状況が限定的だから困ります。そんな中でも、個人、特にホワイトカラーの生産性が上がってくると、最後に残った最大の牙城が、人とのコミュニケーションになるわけですね。このコミュニケーション≒会議を、議事録を作ることによってうまく進めようというのが、この本の主張です。納得、異議なしです。
現在のITではまだこの分野でデファクトスタンダードなソフトウェアは決まっていないですからね、これから共同作業やコラボレーションを効率的に進めることができるソフトウェアがどんどん登場するでしょうね。楽しみです。そういう面で、この本は先進的です。
税理士業の会議
さて、本は役に立つ内容だったのですが、 それでは私の税理士業にすぐ役に立つか?と聞かれると、残念ながら、なんだか、あまり役に立たなそうな気がします。この辺を少し掘り下げてみます。
税理士業では、職人スキルとコミュニケーションスキルと両方が要求されます。かたや、事務所にこもって、緻密な申告書類を間違いなく作成するという職人スキルを必要とします。
また一方で、お客さんの直面する状況を充分に聞き出して、税法に当てはめて、選択肢や将来のリスクを報告します。お客さんは、税務上、何が問題になるのか全て知っているわけではないですから、必要な事項を聞き出すのも腕が入ります。大体、「こいつに話してもしょうがないな、時間の無駄だな」と思われてしまうと、いい仕事はできません。
また、しっかりこちらの話を聞いてもらって、それを咀嚼した上で経営判断を行っていただくというのも、かなり大変なことなのです。聞いていただいた上で決めてもらえれば、どっちでもいいんですけど、なんとなく納得するけど、よくわからないから、俺の好きなようにやるぜ!となると、自分の力不足を感じます。
まあいつもそういった重大な決断事項がある訳ではなくて、いつもは、こちらからは、税務上予想される将来のリスクをできるだけもれなく伝えて。あちらからは、できるだけ経営上の関心事項を聞きだそうとしています。
では、こちらから伝えたい事項を、この本のように文書化すればいいかというと、残念ながら、文書化したくないケースが多いのです。なぜなら、会社の一番の税務上の弱点、問題点が話題になるから、間違ってもそんな書類を税務署や部外者に見られては困るからです。税務調査の場面で、そんな文書が見つかってしまったら、「あなたは事前に問題があると知っていてやっていたんですね?」などと調査官にグリグリとねじ込まれてしまいます。やっぱり口頭で話しておくに限ります。
最後に
念のために言っておきますけど、脱税の相談をしているのではありませんよ。節税と脱税の間には広大なグレー地帯があるのです。この話はいずれまた。
追記
本記事と関係ないですが、糸井重里氏がルールや管理について述べているのが、面白いです。
» 「公私混同」原論 (「公私混同」原論):NBonline(日経ビジネス オンライン)
例えば、このルールを税法と読み替えても当てはまりそうです。また、「「公」「私」の間は白と黒じゃなくて、グラデーションじゃないでしょうか」というのは、私がいずれ書きたいグレー地帯と重なります。
CreativeCommons Attribution-NonCommercial-ShareAlike License, Sylvan Mably