税理士のポジションマップというものを考えました。税理士の方向性が一目で把握できます。結構力作です。

このマップは、二通りの使い方があります。

一つは、経営者が、依頼する税理士を分析するためです。税理士といっても、いろいろと得手不得手などあります。しかし、なかなか、外部からは、わかりにくいものです。自分から苦手なものを吹聴する人はいませんしね。

もう一つは、税理士が、自信のキャリアを考えるための道具としてです。実は、私自身のために作りました。

税法研究志向と顧客訪問志向

顧客訪問志向というのは、例えば、必ず毎月訪問しますとか、顔を繋ぐことを大切にする志向です。

税法研究志向というのは、税制改正をしっかり勉強したり、税理士会の研修に毎回出席したり、節税の方法をいろいろ研究したりする傾向です。

税法研究志向と顧客訪問志向に優劣はありません。むしろ、片方に極端に偏っているのは、マイナスだと考えます。どのあたりのポジションかは、税理士の性格で決まってくると思います。

注意点としては、どちらも顧客志向です。顧客のために、頻繁に訪問するのか、税法を研究するのか、という違いです。

どちらも必要なんです。必要なんですが、時間に限りがある以上、有限のリソースをどう配分するか決めなければなりません。両方やってますという税理士のポジションは、真ん中です。

お客さんにとっては、顧客訪問志向は、好評です。よく聞きます。「うちの税理士さんは、毎月来てくれる」「うちの先生は、年に一度しか来ない」。

しかし、よく訪問する税理士がいいと一概には言えません。お客さんに見えにくいのですが、勉強していない税理士もいます。肝心の申告書に間違いが多かったり、簡単にできる節税方法を知らなかったり。

中小企業が経営の相談役として税理士を活用する場合には、顧客訪問志向の方がいいといえるでしょう。

逆に、大企業の税理士の方が、税法研究志向を要求されます。大きな会社になるほど、難しい税務の問題が出てくるからです。例えば、合併とか、株式評価とか、そういう相談は、よく勉強している税理士に依頼するでしょう。

業界をみていると、顧客訪問志向の税理士の方が成功しやすいように感じます。私の場合は、ちょっと税法研究志向なポジションのようです。

IT得意とアナログ得意

横軸とは、まったく違うものを縦軸にしてみました。縦軸については、ITとアナログと両方得意な人もいますし、両方苦手な人もいます。

ここでいうITの定義は、Webコミュニケーション系を含みません。主として、会計ソフトウェアの習熟やPCの管理です。ITと反対にあるアナログの定義は、曖昧です。IT以外という程度の意味です。

一般的には、ITが苦手より得意な方がいいという気がします。

分析

横軸と縦軸を設定したことで、四象限に具体的な税理士像が浮かび上がってきます。それらしいキーワードを書いてみました。

第一象限:顧客訪問志向・IT得意

お客さんに会計ソフトウェアの導入を勧めて、その導入を支援するのが得意です。ITコーディネータのようなコンサルティングをしている税理士もいます。蛇足ですが、ITが得意でなくても、自計化を推進していることがよくあります。

私もよくお客さんからPCの操作法を尋ねられます。

第二象限:税法研究志向・IT得意

お客さんからはみえにくいですが、どんな税理士事務所でも必ず必要とされる方面です。税理士事務所というのは、書類生産工場です。効率的に間違いのない書類を大量に作るためには、会計・税法とITの両方を理解した人が、社内のシステムを構築する必要があります。

この方面が得意な税理士は少ないようです。というのは、業界のオフコンメーカーに高いお金を払っている事務所が沢山あります。1台100万円以上する化石のようなシステムが、いまだ売れ続けているようです。

うちの事務所では、システムは全部自前で構築しています。自分で使い勝手がいいように組み合わせますし、何か不具合が生じたら、自分で原因を究明・解決しています。

第三象限:税法研究志向・アナログ得意

非常に狭く険しい道ですが、この方面に進んでいる税理士もいます。税法研修の講師や、税法の書籍を執筆している先生です。その分野の第一人者になれば、成功できるでしょうが、そこまでいくのは大変そうです。私は研修や本でよくお世話になります。

第一人者までいかなくても、ちょっと大きい税理士事務所には、必ずこういった税理士が求められます。顧客に発生した難しい問題は、事務所に持ち帰って、検討します。所内に一人、税法に詳しい税理士がいると助かります。小さい税理士事務所では、所長が、この役をこなします。

税理士事務所が最終的に力を発揮するのは、税法の解釈だと思います。税務の問題は、税法の解釈によって解決されるのです。

実は、税務署OBの税理士には、この方面に強い人材が多くいます。税務署では、税理士事務所よりも、狭い分野に限定して、キャリアを積みます。例えば、法人税一筋で、数え切れないほどの税務調査の経験がある税理士ならば、税務署の手の内も知り尽くして、場合によっては後輩があちこちにいて、いざというときに最高の相談相手になります。

ちなみに、税務署では、出来上がってる申告書をチェックするだけで、自分で作ることはありませんから、書類作成は苦手なようです。

私の父は、この方面に入ると思います。

第四象限:顧客訪問志向・アナログ得意

飲み友達って、ここだけあまり良くない事例になってしまいました。この方面は、お客さんと密接なコミュニケーションを取っている税理士をイメージしています。

税理士が実力を発揮するためには、お客さんとのコミュニケーションによる信頼関係が前提となります。こう書けば、重要に感じます。

まとめ

税理士の方には、さて、自分はどのあたりのポジションに位置しているか、考えるきっかけになるでしょうか。

経営者の方には、依頼している税理士事務所の担当者がどのポジションにいるか、参考になるでしょうか。

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公開2008-06-05 税理士業