原価計算について3回目の記事です。
1回目 » サービス業の時間による原価計算:はじめに
2回目 » サービス業の時間による原価計算:手順
今回は、実際に実行している事例を紹介します。ちょっと古い本ですが、かつてライブドアでホリエモンが絶好調だった時代に書かれたものです。2004年発行なので新刊は入手できませんが、古本はたくさん流通しているようです。
【要点】
社員全員がWebサイトから日報を入力すると、そのデータが自動的に労務管理と原価計算に利用される。
当時の状況と、堀江氏の問題意識も読み取れます。
もともとのきっかけは、2000年に東証マザーズに上場準備をすることになったことだった。それまでわが社は組織上は株式会社の形態を取っていたが、現場のやり方はどんぶり勘定もいいところ。原価計算は厳密というのにはほど遠い状態で、
「とにかく売り上げを増やしていけば儲かる!」
と必死でみんなが突っ走っていたような状態だった。だから社内にはコスト計算などの明文化されたルールはまったく存在していなかった。…社員の時間管理にしても同様だった。誰がどのような仕事をしているのかということは、もちろん社長の私は把握していたけれども、それがどのぐらいの時間を取って行われていたのかまでは、厳密には計算していなかったのである。
ライブドアの場合は、本業がソフトウェア開発業ですから、使い勝手がよいシステムを作ることができたのだと思います。羨ましいことです。
Webサービス業の場合
Webサービスは、収益化するまで時間がかかります。開発し、公開し、利用者が増えてきて、やっと単月で黒字化し、知名度が上がれば爆発的に成長する。といった時間経過をたどります。
経費の大部分は人件費のはずです。案件が1件でしたら、原価計算は簡単でしょうけれども、複数の案件をどんどん進めていたライブドアでは、一人が複数の案件に携わるでしょうから、仕組みがなければ、ドンブリ勘定になってしまいます。
先日、3年やって約1億5000万円投資したけれども、黒字化の芽が出ないのでサービス終了したという記事を読みました。
» LingrとRejawサービス終了のお知らせ:江島健太郎 – CNET Japan
なかなかハイリスクな世界です。
それから、ソフトウェア業など、案件ごとにコストを計算する場合は、ジョブコードを時間と紐づける必要があるのですね。税理士業の場合は、ジョブコードがなくても、どのお客さんかを入力しておけば、間に合います。
まとめ
税理士業の場合、書類を作って仕事が終わったら請求するので、期間は長くて2ヶ月といったところです。また、お客さんとは、ながーくお付き合いするのが基本ですから、1案件だけで損得を考えることはしません。なので、税理士業よりも、ソフトウェア業やWebサービス業の方が、ずっと原価計算が大切だと思います。
教科書で学ぶ原価計算ではなくて、実際の経営の役に立つ原価計算を模索してきた私にとって、この本は、「やっぱりそうか」と感じるものでした。