経理の手順は、会社によって千差万別であり、決まったやり方がありません。簿記の教科書通りに杓子定規に進めるのではなく、その会社の業務に合わせた経理システムを作れば、わかりやすく、効率的で、間違いない経理をすることができます。

私が考えた経理システムを設計するために考慮すべき二つ原則を紹介します。既存の経理システムの優劣を考える基準にもなります。

原則1. 一つの情報は一箇所で管理する

一つの情報を2箇所で管理することは、好ましくありません。そのデメリットは、まず2度手間になること、そして、両者が同じかどうかをチェックする必要も生じます。

一人に同じ事を2度やらせれば大雑把になります。二人に同じことをやらせれば、無駄になります。正確に1度でやる方法を模索すべきです。

例えば、経理ソフトに情報を入力しているのに、手書きで同じ情報を作成してはいけません。二度手間に加えて、両者が一致しなかった時に混乱が生じます。

意外に思うかもしれませんが、この考え方は、従来の手書き時代の経理の考え方と明確に違います。手書き時代には、いきなり難しい集計をするのではなく、単純化した数字の書き写し(転記)を繰り返すことにより、書類を作成していきました。人間が間違えるという前提で考えた場合、単純化した転記の方が、間違いにくく、間違えても発見しやすかったのでしょう。

IT時代の経理は、転記をコンピュータに任せて、人間が行う転記を減らすことが目標です。コンピュータは間違えない、正しく入力すれば正しく出力されることが前提なのです。

人間が入力する箇所で集中的に間違いが発生するので、そこをできるだけ限定して、よく見張る仕組みを考えることです。

原則2. 合計をチェックする

経理の基本は、何事もチェック(検算)です。2度電卓を叩いて検算することももちろん大切ですし、もっと重要なのは、その合計が正しいかどうかを、 他の書類と突き合せてチェックすることです。合計が正しければ、その中身は信頼性が大幅に増します。

例えば、簿記の借方と貸方を突き合せる。得意先台帳の売掛金合計と貸借対照表の売掛金を突き合せる。手書の表の縦計と横計を突き合わせる。などです。

一つ一つの作業を間違いなく実行すれば、その合計も正しいはずだ、という発想はとても危険です。人間が間違えるという前提でこそ、合計のチェックは必須です。その意味で、複式簿記の借方と貸方が必ず一致する仕組みは素晴らしい知恵といえます。

頻繁に間違いなくチェックするためには、1対1でチェックできる必要があります。例えば、AとBの合計がCと一致するはずなどというものは、面倒でやりません。A=Cを目で確認できる必要があります。

最後に

二つの原則が相反する場合は、臨機応変に考えてください。

経理システムの最終的な目的は、決算だけでなく、その後の税務調査まで含まれます。その会社に最適な経理システム、経理手順を構築する仕事は、税理士にとって最初に取りかかる非常に付加価値の高い仕事です。

ちょっと抽象的な話になってしまいました。もう少し具体的なノウハウを今後ブログに書いていければいいなと思います。また、事務所Webサイトのコンテンツとして、事務所で研究した具体的な経理の手順を公開していく予定です。

The Great Court
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公開2007-12-18 会計