ITやネットに対する見方は二通りに分かれます。ITすごい!これから世の中が激変するよ派と、ちょっと便利になる程度でしょ派です。

まえがき

梅田望夫氏のように本を書く人だけでなく、ブログの記事を書く人はほとんど全員が、前者のIT激変派に属していると考えていいでしょう。ちょっと便利派の人はそもそも無関心です。参考までに、私の立場は、この記事を書いてることからも明らかなようにIT激変派です。

では、ITによってどのように世の中が変わるのかというと、まだ全貌は誰にもわかりません。しかし、あちらこちらにその萌芽がみえるので、それを熱く論じているのです。私もその片鱗を少し考えたので、荒削りながら書いておきます。

これからの商売で成功する戦略についてです。

今までの競争

まず、今までの競争がどのようなものであったのかをはっきりさせておきましょう。

こちらに新しい生命保険について考察を重ねているブログがあります。コメント欄にて、今までの生命保険の営業がどのようなものだったのか書いてあります。

生命保険 立ち上げ日誌: ネットで生命保険が売れない理由

「タイミングのいい時に、居合わせた平均的な売り手から 買うんじゃないか」という仮説

投稿:teru 代筆 daisuke

生命保険 立ち上げ日誌: ネットで生命保険が売れない理由

なんだかとっても合点がいきます。国際競争力がない業界、規制が強かった業界では、どこでもこんな感じではないでしょうか。

例えば、護送船団方式といわれた銀行。自宅の最寄り駅に支店があるから預金口座を作った人が多そうです。例えば、談合体質が問題となっている建設業。今までの実績で受注が決まります。中の社員さん達は出世競争でものすごく頑張っているんでしょうけれども。外から見ると各社横並びでどこでもいいか、って思います。

先行者利益が強い競争ルールといえます。競争しているようで、本質的に競争していないのです。

そして、税理士業界も例外ではありません。知り合いの税理士になんとなく頼んだ社長さんは多いでしょう。ベストな選択ではないかもしれませんが、現状ではそれが間違いだとは思いません。

税理士業界では特に先行者利益が強いと感じます。今、大手事務所になっている一握りは、確実にウハウハです。その成功体験を読むこともありますが、今から真似しても同じ位成功することは不可能に感じます。

これからの競争

では、 これからの競争はどのようなものになっていくのか。コンテンツ産業についてこのブログの記事がよく考えています。
» ダウンロード違法化は死亡フラグ?(その1) 【ネット著作権】:アート資本主義 – CNET Japan

著作権についての記事ですが、必要な部分を私なりにまとめてみます。

ITによって生産手段と流通手段が安価になり、商品の供給が過剰となった。それとは逆にアテンション(注意・認知・理解=時間コスト)が希少化している。こういう時代に著作権を強化していくのは、時代に逆行するから、消費者にとっても迷惑だけど、権利者団体は将来競争力を失うかもしれない。

いや、Cnetではそこまで書いてません。そこまで論を進めたのは、こちらのブログです。
» ダウンロード違法化はグーグルの一極支配を加速する – アンカテ(Uncategorizable Blog)

また、梅田望夫氏は、アテンションが希少化してきたからこそ、アテンション(広告)を売っているグーグルが儲かる、といっています。

生産性を向上させるIT

この二つの未来予測記事を読んで、最初はCnet記事から現状認識します。

ほとんどの業種・会社で、ITによって生産手段と流通手段が安価になった恩恵を受けていると思います。これを実感できない人はいないでしょう。であるならば、必然的に、多かれ少なかれ、商品の供給が過剰になるといえます。そして供給が過剰になれば、市場の法則によって、価格が下落します。

私の実感では、ITによる生産性向上と価格下落が追いかけっこをしています。競合他社より早くITによって生産性を向上させれば、追いつかれるまで他社より利益を得ることができます。

ここでまた税理士業界をみてみましょう。かつて高度成長期には、税理士の顧問料は高卒の初任給程度だったといわれています。今では考えられません。私はそんな昔のことを知りませんが、古き良き時代でした。本題からそれますが、そのようなノスタルジーにひたれる映画があります。
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例えば、税理士事務所でしたら、レーザープリンタの価値は100万円以上あると思います。昔、その位でも売れていました。でも今では10万円で手に入ります。なにしろこの業界は、大型コンピュータをシェアして利用する時代から生産性向上のためにOA化を推進してきたのです。その名残が栃木計算センターです。

ITの目先の変化はこのようなものだと思います。生産性向上は、もう常識ですよね。

流通手段としてのIT

流通手段としてのITは、まだ半分位しか認知されていないのではないかと思います。これを中小企業に当てはめると、ネットショップで物が売れるか?ホームページで集客できるのか?というテーマになります。2000年前後の初期のネットショップでは、本当に売れるのかどうか、世間が半信半疑に思う中、店主の信念で進めていたようです。その苦労は、あちこちの伝記で読むことができます。今ではネットで売れない物はないと聞きます。

私は、これを信じていますが、実践するには、まだコンテンツの準備に時間がかかります。

アテンションの獲得

この延長線上で、アテンションの獲得競争が始まると考えられます。まだ本当に信じてる人は少数派でしょう。

まず思うのは、今までの経済では、大企業が独占・寡占にって大きな利益を得るシーンが多かったのですが、これからは、そういったうま味はなくなるでしょう。その代わり、独占・寡占よりはるかに短いスパンですが、アテンションを集めることに成功した企業が一時的に大きな利益を得るでしょう。アテンションは多額の設備投資を必要としないでしょうから、総合的にみれば、大企業に対して、中小企業でも勝ち目が出てきて有利になる筈です。

ネット上では、大企業の充実したWebサイトよりも、個人のブログや、個性的なネットショップが注目されることが多いですよね。予算で比較したら、圧倒的なパフォーマンスの差だと思います。ブログを読むのが好きなので、客観的に検証できませんが、少なくともはてなブックマーク – 人気エントリーでは大企業の存在感が非常に低いですね。

それから、アテンション獲得戦略では、無料化して敷居を低くすることが多いです。広告で収益を得ることは難しそうです。業界によっては、みんなで低収益化してしまうこともあるのではないでしょうか。

税理士業のサービスというのは、結局、時間が原価になりますから、低価格化が難しいというネックがあります。無料のWebサービスのようにはいきません。今のところ、無料税務相談で成功した税理士はいないと思います。収入が減って困った税理士が低価格で請け負い始め、相場が下がって、全体がジリ貧化する危惧はありますけれども。

そうすると、当たり前のことを淡々と堅実にこなした上で、特徴を出して付加価値を付けていく戦略になるでしょう。

いや、結論が月並みになってしまって恐縮です。アテンション獲得戦略がどのようなものなのかは、これから色々出てくるでしょう。それに、根底にある現状認識が違えば、その違いがいずれ決定的な差となって表に現れてくることもあるでしょう。

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公開2007-12-19 ネットビジネス