給与計算の実務に関する細かい話です。普段からあまりにも紛らわしくて間違いやすい問題なので、わかりやすく書いてみます。

給与計算における社会保険と税金の違い

給与計算というのは、以下のような複雑な式となっています。
基本給+○○手当…+残業手当+通勤手当=総支給額
総支給額ー社会保険料-源泉所得税-住民税=差引支給額
この中で、社会保険料=健康保険料+介護保険料+厚生年金保険料+雇用保険料

(ここで税金といえば、源泉所得税と特別徴収される住民税を指しますが、住民税は市区町村が計算してくれるので、税金を源泉所得税と読み替えても、以下の文意は通じます。)

税金の計算の上では、通勤手当を除いて、総支給額の内訳を無視します。例えば、残業手当がなくても気にしません。いくらもっともらしい手当の名目を考えたとしても原則課税されます。ただ、通勤手当だけは、旅費交通費などの勘定科目にすることにより、税金の計算から除くことができるので、受給者の節税になります。逆に社会保険料の計算では、通勤手当は給与に含めます。

問題の所在

上記の式の中で課税対象額という言葉はでてきません。課税対象額は以下の式になります。
課税対象額=総支給額-通勤手当-社会保険料ーその他全ての控除
控除を全て差し引いたものが課税対象額になりますが、給与計算では控除の一つである社会保険料しか扱いませんから、課税対象額という言葉を使うのは適切ではないのですが、給与ソフトの中には、総支給額ー通勤手当-社会保険料=課税対象額と表示されるものがあるのです。紛らわしくて本当に困ります。

誤表記の原因

何でこういう誤りがまかり通っているのかというのは、推測できます。ますますややこしい話になりますので、頭が痛くなってきた人は読み飛ばしてください。

給与計算の段階では、「源泉徴収税額表」によって源泉所得税を計算します。この表の中で、「その月の社会保険料等控除後の給与等の金額」=総支給額ー通勤手当ー社会保険料を使います。この言葉を勝手に省略して課税対象額と表記してしまったのが、誤りの原因でしょう。

給与計算の段階では、無視できる違いかもしれませんが、最後に年末調整や確定申告をする時には、致命的な違いとなります。

最後に

給与計算の実務をされている人は、一度確かめてみてください。年末調整を請け負っている税理士事務所にとっては、要注意事項です。いつか給与計算のソフトウェアを開発している人が読んでくれる事を願ってます。

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公開2007-07-11 税法と法律