グーグル脅威論の一種。だけど、ちょっとピントはずれな感じです。後半は、著者のワンマンショー。
脅威より賞賛でしょ
インターネットの登場が、今までぬくぬくと守られてきた既成産業を破壊するという警鐘が昔からありました。本当かどうかは別として。最近では、その主語が、インターネットからグーグルへと書き換えられているようです。
既成産業の代表が、テレビ、新聞、広告です。特に電波と著作権がからむ業界ですね。
たしかにグーグルがこういった産業の衰退を加速しているのかもしれません。が、遅かれ早かれそういう時代の流れになのではないかと思います。
私としては、グーグルの脅威よりも、検索をはじめとする様々なサービスが無料で使えるようになったことを賞賛したい気持ちです。
無料と有料の違い
どんなに使われていても、無料というのは、経済において、存在しないのと同義に近いのではないでしょうか。例えば、経済や経営において、無料の水と空気について論じることはありません。付加価値がついてお代をもらえるようになったミネラルウォーターなら、対象になります。
なので、無料サービスそのものに、過度に注目するのは、特にビジネスマンとして誤った方向性ではないかと思います。
無料、もしくは無料に近い話としては、以下のような論点があります。
・チープ革命
・ブログ
・総表現社会
・WEB2.0
こういうキーワードを書いていくと、話が大きくなってしまいますから、元に戻します。
要するに、梅田望夫氏のウェブ進化論は名著ですが、いささか無料な部分に対する注目が強すぎたのではないかと、3年前を振り返って思うのです。
グーグルで最も注目するべきは、その売上高ではないでしょうか。つまり、検索連動広告が、既存の広告と比してとてつもなく有効であることです。特に費用対効果の面で。グーグルの株価が高いのも、検索連動広告による売上高があるからなのです。
そういう意味で、グーグルの広告についてこの本は大きく取り上げていているので、やっぱり重要だなと再認識します。
結論があさっての方向
ブログに読書感想文を書くようになって感じることがあります。タイトル・序論・本論と読者を引きつけて、結論近くに、今までの話の流れに関係なく、著者が言いたいことを好き勝手に書くというケースが多すぎます。『強欲資本主義 ウォール街の自爆』がそうでした。この本もそうです。
1章から7章まで、グーグルがどんどん身近に浸透し、既存のビジネスを脅かしている様子を詳細にレポートしています。内容に同意するわけではありませんが、よくまとまっていると思います。
そして、最後の8章が「グーグル後に勝つ日本の技術」です。結論になっていません。「日本発「なづき」はグーグルを超えるか」といわれても、それ何? いくらもらってるの? という感じです。
新書なので、ささっと読んで、はい次って感じでしょうかね。新書は、スーツのポケットに入るところがいいんです。内容ではありません。