この本については、私が書くまでもなく、以下を読めば足りてしまう。とはいうものの、一応、自分でも何か書いておきたい。
» 飲み屋で宮崎駿が泣き出した。さあ、どうする?~『仕事道楽』 鈴木敏夫著(評:朝山実):NBonline(日経ビジネス オンライン)

仕事道楽―スタジオジブリの現場 (岩波新書 新赤版 1143)全編にわたって創作の苦労を語っているのだけれど、読後の印象では、創作の楽しさだけが残る。私にも、いつか物語を作ってみたいという、夢が湧いてきました。

読書が趣味とか、教養があるという人は、沢山いるでしょう。しかし、それらをベースに創作につなげている人はそんなにいないのではないかと思います。そんな創作の裏側を少しだけこの本から覗くことができます。

徳間社長の銀行観

私的には、以下の鈴木プロデューサーと徳間社長の会話が最高に笑えました。

「社長!」
「なんだ」
「こうこうこういうわけで、宮さんがスタジオを作りたいというのですけどね」
「おう、いいことだ、やれ」
「社長、やるのはいいけど、土地が必要で、お金がないんです」
ああ、金は銀行にいくらでもある

これ、貸してる銀行が聞いたら、激怒ものでしょう。徳間社長が亡くなっていて、徳間書店の再編が終わっているからこそ書けるのだと思います。

徳間社長が豪傑だったというのは、よくわかります。死ぬまで好きなことをやり通した人なのでしょう。しかし、経営として、これはどうなのでしょう。真似しない方がいいと思います。別の視点としてWikipediaが参考になります。社長死後、解体されて、ジブリは日本テレビ傘下になっていたのですね。

最後に

この本にはあまり書かれていませんが、これからのジブリの最大の問題は、後継者問題でしょう。宮崎駿氏・高畑勲氏の作家性を発揮する場として大きくなってまったジブリです。映画という当たり外れの激しい世界と、ゴーイングコンサーン・継続性を必要とする会社組織とをどう両立させていくのか。鈴木プロデューサーの手腕がこれから問われます。世界でも有数の職能集団であるジブリを利用して自分の物語を作りたいという人が、今のところ見受けられません。

Tunisia
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公開2008-08-11 経営全般