今日は視点をかえて、経理担当者の目から税理士を検証します。

経理担当者とは

ここで経理担当者とは、経理に関してなんらかの仕事をしている人を対象にします。CFO、経理財務担当取締役、経理部長、総務部長、経理課社員、経理責任者、小口現金出納帳係、いろいろな肩書きの人が含まれます。

経営者と税理士だけで経理を全てやっている会社には、経理担当者はいませんので、この記事の対象外です。しかし、例え小さな会社であっても、経理担当者がいる場合が多いです。私の事務所の概算では、80%の関与先に経理担当者がいます。経営に忙しい経営者にとっては、できれば、経理は人に任せて自分でやりたくないというのが本音だと思います。

中小企業では、経理担当者は、身内、特に経営者の奥様がやっていることが多いでしょう。先ほどの80%のうち半分に当たります。どちらかというと、この記事は、身内の経理担当者よりも、他人の経理担当者の場合を想定しています。

ここで脇道にそれます。私の持論では、最初は経営者が経理を担当し、ある程度会社が大きくなったら、身内ではない他人に経理を任せるのが理想だと考えます。身内の場合でも、なるべく奥様ではなく、遠い身内がいいです。が、これは、あくまでも、理想ですので、現状、奥様が担当しているからといって、即、駄目というわけではありません。成長過程の会社なのです。これは、その方が、会社組織としての体裁が整うと思うからです。これもいずれ話したいテーマということで。

経理担当者の仕事

本題に戻ります。経理担当者にとって、税理士は味方になります。利用するというと語弊があります。自分の仕事に対して、税理士に協力してもらうのです。

経理担当者の仕事とは何かといえば、大きく二つあります。会社の経理全般の事務を遂行することと、その内容を上司である経営者に報告することです。

経理の仕事

経理の仕事自体も、いろいろと勉強しなければいけないことがあり、最初は大変に感じると思います。しかし、これは自分で頑張ればなんとかなる問題です。困ったことは、税理士事務所に頼めば手伝ってもらえます。税理士の先生ではなく、事務所の職員に頼んだ方がいいでしょう。

ここでの注意点は、間違っても経理担当者が楽をするために、税理士事務所を利用しないことです。自分でやればできることはできるだけ自分でやり、どうしてもできない仕事だけを税理士事務所に依頼することです。

税理士事務所に単純作業を依頼してしまったら、税理士事務所は、それだけで顧問料に値する仕事をしていると認識してしまいます。私が言うと自分勝手に思うかもしれませんが、普段は税理士事務所に「あまり仕事をしていないのに報酬をいただいていて申し訳ない」と思わせておいた方が、いざという時に役に立ちます。これは、保険とか貯金みたいなものです。

もし、どう考えても、いざという時に役に立ちそうにない税理士ならば、値切るか変えた方がいいでしょう。

経営者に報告

おそらく経理担当者に共通の課題は、経営者への報告にあります。経理担当者は、 経理上の問題点などを、なかなか経営者に理解してもらえず、適切と思えるアドバイスももらえないと感じているでしょう。客観的に考えてみれば、それもその筈です。

第一に、経理担当者の方が、経営者より、経理の専門知識があります。だから、経理を担当しているのですし、経理を続けていれば、さらに詳しくなります。経理上の問題点を経営者に報告する前に、税理士事務所に相談し、聞いたアドバイスを経営者に伝えれば、「では、そうしてください」と経営者が答えやすくなります。

第二に、残念ながら、経営者は経理の仕事をさせるために、経理担当者を雇ったのであり、経理担当者の意見を聞くために雇ったのではないからです。厳しい言い方ですが、経営者には、そういう考えが無意識にでもあるでしょう。

税理士を利用

そこで、税理士を利用するのです。いや、税理士にうまく協力してもらうのです。経営者は、従業員の話は聞きたくありませんが、税理士の話は聞きます。いや、聞く筈です。経営者は、税理士からアドバイスを聞くために、その税理士に顧問をお願いしているからです。経理担当者と税理士には、能力の違いではなく、立場の違いがあるのです。

余談ですが、経営者がその税理士の話を聞く気がなくなったら、その税理士が優秀か無能かにかかわらず、ちゃんとした税理士の仕事はできませんので、すぐ税理士を変えた方がいいでしょう。

この記事の最大のポイントは、経営者への話は税理士にしてもらうことです。そういう形になるように、日頃から、経理担当者は、経営者にも、税理士にも働きかけることです。

とびきり優秀な税理士ならば、経理担当者が切り出しにくい話題は、全て税理士があうんの呼吸で引き受けるでしょう。しかし、そうとも限りませんから、確認が必要です。

経理担当者→税理士「それでは、この話は、先生から社長に伝えておいていただけますか」
経理担当者→税理士「先生、こないだの話は、社長が何と申していたでしょうか?」
経理担当者→経営者「社長、税理士先生からこれこれという話を聞きましたけど、お聞きになりましか?いかがいたしましょうか」

全ての問題について、厳格にこのような手順を踏むのは煩雑に過ぎますけれども、要するに、経営者と経理担当者との1対1の関係から、税理士を交えた三角関係に持っていくといいのです。具体的にどんなメリットがあるのかは、記事も長くなってきて詳細は割愛しますが、一言でいうと、経理担当者の責任を税理士に分担してもらうのです。他にも、会社でサラリーマン人生を歩んでいれば、保身のためという点で、ピピッとくるのではないでしょうか。

職員の場合

税理士事務所の所長先生ではなく、担当する職員が会社に来ている場合があります。特に大きな事務所の場合。ですが、職員のバックには所長の税理士がいて、職員が解決できない問題は、所長に相談しますし、職員がどのように遇されているのかを所長は気にかけるものですから、職員でもできるだけ所長と同等に応対しておくと、背後にいる所長にいいメッセージを送ることができます。

有り体に申し上げると、より高い顧問料を払わないと所長先生はきてくれませんが、担当の職員に、さりげなく「所長先生はどのようにお考えでしょうかねぇ」と聞くことによって、間接的に相談ができます。

最後に注意点

時々、経理担当者が自腹を切って、菓子折を税理士事務所に渡したりしますが、あまり関心しません。税理士も気持ちは嬉しいけど、何かあると困ります。そういう物は、経営者の了承を得て、なるべく会社の経費で落とすようにしましょう。その方が、税理士も気が楽です。

最後にこれだけは付け加えておきます。非常事態となったとき、税理士は経営者の味方か、経理担当者の味方か、と問うと、経営者の味方であって、経理担当者の味方ではありません。経理担当者ではなく、経営者が(会社を通して)報酬を支払っているからです。誰も、そんな事態には、なりたくないですけれども。

それでは、経営者・経理担当者・税理士の三者で協力して、円滑に経理を遂行し、財務諸表が経営判断の基礎となることで、会社の役に立っていきましょう。

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公開2008-01-06 税理士業