世間で住基法などでセキュリティとかプライバシーとか問題になっているからかどうかはわかりませんが、国税庁はとっても厳重なセキュリティシステムを作りました。
イータックス

地方税も国税庁と同じように作りました。
エルタックス

電子申告をするためには、ICカードを取得して、複数のIDとパスワードを取得して(以下、省略)と、それはもう安全で、とってもセキュアで、ハッカーといえども絶対突破できないような。

ITゼネコンが、喜んで活躍した姿が目に浮かぶようです。これもやりましょう、あれもやりましょうと、たくさんの予算を費消して、たくさんのIT土方の雇用を生み出していることでしょう。

私はセキュリティの専門家ではないので、イータックスのセキュリティについて、感想以上のものは言えません。ただ、利用者としては、いろいろと言いたくなります。

言いたいこと

1点目、アマゾンはICカードなんて使ってないけど、メールとパスワードだけで安全に運営できているようです。同じようにできないのかな。

Amazon.co.jp: ヘルプ > プライバシー・保証 > お買い物保証ポリシー

Amazon.co.jp お買い物保証ポリシーにより、当サイトでショッピングされるお客様は保護されますので、クレジットカードの安全性について心配される必要はありません。

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2点目、もともと、申告書は誰でも自由に税務署に提出できる状態になっています(今でも)。なんで電子申告だと本人確認が必要なんでしょう。この本人確認の問題を最初によく考えてからIT化を進めるべきだったと思うのです。

今までと比べて

まず紙ベースの申告の実態をおさらいしておきましょう。法人税法で定められた本人確認の方法は、署名と本人の認印です。代表印でさえありません。申告書を税務署に持って行けば、誰でも身分証の提示なく、申告書を提出することができ、形式が整っていれば、内容を確認することなく受領されます。署名がなくてワープロ打ちされていても、通ります。

ちなみに、早めに提出した申告書に間違いが発覚しても、申告期限まででしたら、正しく作り直して、再提出し、その際、「前回のは間違えました。こちらが正しいです」と口頭で伝えておけば済みます。

なぜ、このようなゆるい認証でも、詐欺やなりすましなどで混乱することなく、制度を維持できるのでしょうか。それは、例えば、法人税の申告書を作成するためには、前期の申告書を参考にしないと、矛盾が生じて、すぐ露見するからです。法人税の申告書を持っているのは、会社と税理士と銀行ぐらいですからね、これなら納得です。

では、所得税の申告書は、といいますと、実は前年の申告書が無くても、普通に作成可能です。本人の署名は不要で、認印のみです。これはひどいと思うかもしれませんが、このやり方で、税務署は今まで数十年間運用してきているんですよね。これからも変更の予定はなさそうです。

注)所得税の申告については、妻が勝手に夫の認印を押して提出した申告書を無効かどうか争った判例があったような気がします。有効だったような。

まとめ

こういう紙ベースの認証方法を税務署がそのままで運用し続けているのは、税金の申告システムにおいて、実は、本人確認はさほど重要ではないからだと思います。もともと、税金の制度は悪用して利益を得ることが難しいシステムなのです。注)一時期、消費税の還付詐欺がはやって、これについては、税務署も警戒するようになりました。

この辺をしっかりと議論して、納得するように整理してから、電子申告制度を設計すれば、もっといいシステムができたのではないかと思います。あまりに電子申告の使い勝手が悪いものですから、こういう矛盾点を指摘したくなりました。国税庁と税理士会が電子申告を推進していますが、正直あまり気乗りがしないのです。それに、このままでは、電子申告ってITの袋小路じゃないかなという予感がしまする。

verde amarelo
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公開2007-11-20 税法と法律