ある意味、読んでいて悲しくなる本でした。敗れるべき戦争だったという前提は、致し方がないとしても、間違った作戦立案によって、何万人もの日本人が実際に戦死しているのです。あの戦争をどんなかたちであれ、生き残っていれば、新しい人生が始まっていたであろうに。そういえば私の祖父の弟も戦死したんだっけなぁ、田舎に軍服の黒縁写真があります。
この本は、日本軍という近代官僚組織が、経営組織論的にみて、どれだけ駄目駄目であったかを明らかにしています。すごい大作です。6人もの著者がいながら、首尾一貫した方針でまとめられています。
第二次世界大戦の本というと、どうも過去の栄光的ノスタルジーに浸るものが多そうな気がします。例えば、こんな本とか。もしもあの時…ってやつですね。
しかしながら、『失敗の本質』は、戦史と経営学が見事に融合して、日本人の未来に向けての教訓となっています。
やっぱり日本人は戦略的思考が苦手だったのだなあと思わずにはいられません。論理的思考、科学的思考の欠如。知識を共有する、議論することも苦手なようです。それでも軍は日本で一番のエリートコースだったんですからね。どこかで読みましたが、今のキャリア官僚のトップ、財務省より上だったそうです。
それに対して、敵側のアメリカ将校が科学的思考という面でいかに優秀であったかというのは、こんな本からも、うかがい知ることができます。
ただ、この『失敗の本質』から最も未来が感じられるのは、著者達が防衛大学の教授陣であることです。こういう客観的分析が活かされるのであれば、もしかしたら、将来に同じ轍を踏まないで済むかもしれません。
ちょっととりとめもない読書感想文になってしまったので、いつか整理して書き直すかもしれません。