著者が船井総研のやり手経営コンサルタントであることは、以前にネット上でみつけたので知っていました。

「正義の経営」で10倍儲ける方法» ビジネスプロデューサー五十棲剛史 Official Web Site
毎日の業務をこなしながら、Webサイトに毎日書き込みをしたり、メールマガジンを発行したりとすごいバイタリティだな、とても真似できないな、と感心しながら読んでいました。しかしながら、Webサイトにパスワードとか有料コンテンツとかが強化されてきて、私の巡回サイトからは外れていました。最近、本屋でこの本が目にとまり、isozumi.comを思い出して、手に取ってみました。

とりあえず要約

新しい本で若い人が書いた経営本は、より最近の経済環境を前提として書かれているところがいいところです。主として既存の商売をしている経営者を対象に、経済が成熟して供給過剰になってくると、より付加価値のある本物が生き残っていきますよ、いつまでも安売りでは駄目ですよ、という話です。

特に、より顧客を絞り込んで特化していく方が儲かるという実例は興味深いです。とても自分ではチャレンジできないと感じます。

売らんかなと考えるのではなく、会社の理念や使命を定義して、それを追求していけば、自然と認められて成功するというのは、もっともだと思います。

内容の逆を行く出版方針

ただ、私が非常に残念に思うのは、この本のタイトルや装丁が内容と逆になっていることです。正式なタイトルは、『御社のお客が信者に変わる!「正義の経営」で10倍設ける方法』。何を根拠に10倍などという数字を持ち出しているのか、そんな説明は中身にありません。

せっかくの実践に裏付けられた経営理論を安っぽいハウツーモノに貶めています。おそらくこれは出版社が悪いのでしょう。もし有名出版社の新書で出版されていれば、また随分と印象も変わっていたでしょう。

コンサルティングと書籍の関係

こういう本を読むと、経営コンサルと書籍の関係についても考えが及びます。一を見て十を知るような本当に優秀な経営者が読めば、自分で自社に応用するでしょう。けれども、普通の人が、実際に会社を変えていこうと思ったら、やっぱりお呼びして、生で話を聞いて、ウン百万円ほど支払わないと、難しいだろうなと思うのです。

この本もそうですが、一般に経営コンサルタントの商売をしている人であっても、著書の執筆にあたって知識の出し惜しみはないように感じます。それで本もコンサルティングもうまくいくのです。精一杯のことを惜しげもなく書いておけば、最終的に商売につながるでしょう。

それは、当然、Webにも当てはまります。対象とする読者を想定してみると、大体経営に興味がない人はいくら無料だってまず読みません、また、忙しい経営者がちょっと興味を持ったとしても、登録とかパスワードとかは面倒すぎます。

どうせ経営コンサルティングの収入に比べたら、Webの有料コンテンツなんて雀の涙程度のものなのだから、それならばいっそのこと、全部無料にして、ネット上での評判を得ればいいのにと、私は余計なお世話ながら思いました。

多少辛口になってしまいましたが、面白くてためになり、一気に読めてしまったということが前提での意見です。

Burano
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公開2007-10-30 経営全般