当時、あれだけ一方的にマスコミからの情報を聞かされたら、当事者からの反論も聞いておかないとバランスが取れません。ということで、購入。Amazon.co.jp: 徹底抗戦: 堀江 貴文: 本

検察と経営

私の関心は、主に、検察と経営の二点です。検察の話は、権力の横暴だという主張はわかるんですけれども、読むなら佐藤優氏の 国家の罠の方がいいと思います。それより面白いのは、ライブドアの経営について堀江氏がどのように考えていたかです。

最近、堀江貴文氏のメディア露出が増えているのは、裁判戦術の方針変更によるものだと書いてありました。経営については、この本と並んで、以下のインタビューが深く掘り下げています。
» 新聞やテレビが絶対に書かない「ホリエモン」こと「堀江貴文」の真実~ロングインタビュー前編~ – GIGAZINE

経営については、時流に乗って急激に拡大する組織をどうやって舵取りしていくのかを体験した人です。現在の視点からみると、うまくやっていた点と、まずかった点が、わかります。例えば、投資家の支持による株価の力を事業拡大につなげていく点は、真似したくてもできない有効な戦略だったと思います。財務の知識がなくて、側近に裏切られた点が最もまずかった経営だと思います。他にも細かい点がいろいろと参考になります。

やりたかったこととやっていたこと

読み返してみると、堀江氏がやりたかったことと、実際にやっていたことには、かなりのずれがあると感じます。ずれというよりも、言っていることと、やっていることが、全然違うんじゃありませんか? 私が感じる違和感に対して、この本から堀江氏の自覚はないようです。ついでに予備知識も全然なかったかとがわかります。

堀江氏がやりたかったことは、本にあるように、まず、ライブドアの拡大・成長を達成して、リタイアしたら宇宙開発をするのが夢だったといいます。もっとこの本でライブドアの夢を語っていただきたかったけれども。

しかし、実際にやっていたことは、明確な権力志向でした。フジテレビ買収と選挙です。本心かどうかわかりませんが、こう書いてます。

実を言うと、テレビ放送にライブドアのURLを貼り付けるのが、私がしたかった唯一のこと。

広告効果やシナジー効果のために、第4の権力と言われるマスコミを金で買おうとしたの? 非常にまずいやり方の売名行為ではなかったのか? 敵対的になったら、日本のエスタブリッシュメントに対する宣戦布告になるのに。

例えうまくいったとしても、ライブドアの事業目的が、テレビ局買収によって推進できたのか疑問に感じます。ましてや、これからテレビが衰退すると予想していたというのに。

そして、選挙。亀井さんに勝ったら最短で首相になれたはずだと、最近どこかで書いてました。堀江氏の現時点での選挙に出たことの総括は、こうです。

あの熱狂の一ヶ月間は、かけがえのない経験になった。それだけは間違いない。

堀江氏が主張するように、月曜日の強制捜査による株価の暴落は、東京地検特捜部にも責任があると思います。しかし、選挙に出馬して、会社を一ヶ月留守にしていたというのは、ライブドアに期待していた人々に対する裏切り行為・責任放棄ではないでしょうか。

ライブドア株を購入していた投資家が被った経済的損失に対して、堀江氏が謝罪べきかどうかは、私にはどちらともわかりません。だけど、選挙に出馬したことは、道義的に考えると、反省するとか謝罪するべきではないかと思います。

やっぱり人間は、やりたいことを全部できるわけではないですね。たとえ充分な資金を持っていたとしても。社長という責任ある仕事を引き受けている間は、他のことはできないですよね。この辺が、私が一番同意できないところです。

堀江氏がライブドア事件の決着をつけてから、何を始めるのか楽しみにしています。

Nobility / Nobleza
Nobility / Nobleza by smb_flickr

公開2009-03-09 今まで読んだ本